最低な大使館員≪十月二十三日≫ ―壱―昨夜の雨は上がってはいるものの、今朝の天候はどうも不安定。 一年のうち、300日が晴天と言われているギリシャでも、俺がアテネ入りして からは、そんな天候どこへやら・・・・。 今にも雨が降り出しそうな、そんな強風かのなか大使館をまた訪ねた。 中に入ると、十月十九日付けの新聞が、カウンターの上に置かれているのを 見つける。 しばらくその新聞を見ていると、若い大使館員らしき男が、嫌そうな顔をし て言った。 嫌そうな大使館員「新聞を見に来たのですか?」 俺 「いや・・・・別に・・・。」 そういうか言わないうちに、素早くカウンターも上にあった新聞をひ ったくる様にして持って行くではないか。 俺 「何だ!新聞くらい見せてくれたって良い んじゃないの!!」 嫌そうな大使館員「・・・・・・。」 俺 「見せたくない新聞なら、カウンターの上 に置いとくんじゃないよ!」 嫌そうな大使館員「・・・・・・。」 俺 「その新聞だって、どうせ税金で買ったも のだろ!」 嫌そうな大使館員「・・・・・・・・。」 すると、同じ大使館に勤めている人だろうか。 若い女の事務員が近づいてきて謝った。 女性「すみません。規則なもんですから。」 俺 「・・・・・。」 女性「・・・すみません。」 またその女性事務員が謝った。 俺 「タイなんかでは、二三日遅れの新聞が、普通の喫茶店 でも見ることが出来たのに、ここでは一ヶ月遅れの新聞 さえ置いてないなんて、おかしいんじゃないの?」 女性「すみません!外務省の方針で、新聞は大使だけしか取 っていないんです。私達のところへも回ってこないんで す。私達も関係のある、重要な記事だけコピーで送られ てくるだけなんです。」 俺 「・・・・だけど、それって税金でしょ。大使だけ の・・・・なんておかしいでしょ!たかが新聞でしょ。 何なんですか、日本大使館では新聞が機密文書なんでし ょうか・・・ね。」 女性「申し訳ありません。」 俺 「そうですか。あなたに責任はありませんからね。あな たばかり責めたって・・・・しょうがないことですか ら。」 女性「昔は、図書の貸し出しまでやっていたのですが、赤軍 派の件がありまして、一部始終監視する訳にもいかず、 止めてしまったんです。ここギリシャは紛争地域のイス ラエルやアラブが近いもんですから、必要以上に警戒し ているんです。」 俺 「それならそうと話せば分かることじゃないです か!・・・ひったくることはないでしょう。見せたくな いものなら、見える所に置かなければいいことだし、た かが新聞だよ?もう少し同胞を信じて欲しいね。新聞ぐ らいの情報がそんなに貴重なもんかね。同胞の旅人の助 けをするのが大使館員の役目だと思うけどね。」 女性「すみません!」 ジャンル別一覧
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